[tab:英語]
- polyester
[tab:歴史]
- ナイロンを発明したカローザス博士は、ナイロンを研究する前にポリエステルの研究を行っていたが、得られたポリエステルは機械的性質が乏しく目標に達しなかった。
- 実験を行った中で、ベンゼン環をもった芳香族二塩基酸との組み合わせは、フタル酸とエチレングリコールについてを行い、その他のもの使用して実験したか否かは定かではない。
- カローザス博士は、ナイロンの研究に移ってしまい、ポリエステルは見捨てられたかのように思われましたが、カローザス博士の研究報告を詳細に追試する研究者が現れました。
- この研究者が、追試の中からポリエチレンテレフタレートの構造をしたポリエステルが始めて合成された。
[tab:特徴]
- ポリエステルは、エステル結合を含んだ高分子材料である。
- ベンゼン環が含まれていることで、分子間に働く相互作用が強められて、高分子鎖が直線状であり持続長が長い特性を示す。
- 強度が強い
- 吸水性がない(ナイロンフィルムの1/40程度)
- 透明性が高い
- 水蒸気や酸素、炭酸ガスのバリヤー性能が高い
- 成型加工時の結晶化が遅い
- 有機溶剤や油類に対しては強い
- 強酸、強アルカリ、水蒸気(沸騰水)に弱い
- アミン類で分解する
- 吸水性は低いが、水蒸気雰囲気の加熱でエステル結合が加水分解する
- 価格が安い
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ポリエチレンテレフタレート (PET)
- PBTと比較して、グリコール鎖が短く、剛直な構造を有している。
- PBTと比較して、機械的性質、耐熱性、表面硬度が優れている。
- 反対に、結晶速度が小さいため、高温の金型が必要な事や、耐衝撃性が低い。
- PETのみの場合の成形品の熱変形温度は70℃前後と低い
- PETに約30%のガラス繊維を混合することで、熱変形温度が240℃までとなる
- ガラス繊維により熱変形温度が変る理由は、PETは全体の48%と高くない結晶が、ガラス繊維との界面で結晶構造が成長することと、非結晶性の部分が力学的な性質にかかわってくるもの考えられている。
- そのため、融点近い温度でも、力が加わると、この力を分散して受け止めるため、容易に変化しない。
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ポリブチレンテレフタレート (PBT)
- PETと比較して、結晶速度が大きいため成形サイクルを短くする事が出来る。
- 吸水性がPETより低いため、寸法安定性に優れている。
- 摩擦・磨耗特性が良い
- PBTのみの場合の成形品の熱変形温度は58℃前後と低い
- PBTに約30%のガラス繊維を混合することで、熱変形温度が212℃までとなる
- 長期耐熱性が良好(120~140℃の連続運転で使用可能)
- 機械的特性、耐熱性、電気特性等を低下させることなく、難燃化する事が出来る。
- 耐候性が良い
- 耐衝撃性が低い
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芳香族ポリエステル
- 芳香族ポリエステルとは、ベンゼン環のパラの位置をエステル結合で連結させた繰り返し構造をもったもの
- ポリオキシ安息香酸(ポリエステル E101)は、分子間に強い相互作用が働くため、結晶性が強い。
- ポリエステル E101は、400℃以下では、流動性を示さず、450℃に加熱されても完全に溶融しない程の超耐熱性高分子材料である。
- E101の優れた耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性を活用するため、ポリテトラフルオロエチレン(ポリ四フッ化エチレン)にポリエステル E101の粉末を充填した組成から成形することで、耐摩耗性を数千倍向上させる事が出来る。
- 各種熱可塑性高分子に充填することで、自己潤滑性の摺動特性を向上させる事が出来る。
- ポリエステル E101の特性は優れているが、成形しにくい点があるため、パラオキシ安息香酸の重縮合反応の際に、芳香族の二塩基酸やジオールを加えて重合することで、圧縮成形が出来る共重合ポリエステル E1000と射出成形が出来る共重合ポリエステル E2000を作りだした。
- 共重合ポリエステル E1000は、このままの組成で圧縮成形され、290℃~300℃の高温で郷土が必要とされるような耐熱、断熱の材料や部品として使用される。
- また、二次加工用の成形材(丸棒、パイプ、板材)等で供給されている。
- ポリエステル E2000は、ポリオレフィン並みの流動性を示すため、射出成形が可能となった。
- 単独組成で使用した場合でも、熱変形温度が293℃、連続使用温度が280℃~300℃と、優れた耐熱性を備えた成形品が、容易に射出成形で製造する事が可能である。
- この耐熱特性は、熱可塑性材料の中ではトップクラスであり、熱可塑性高分子を含めてもポリイミドにつぐ最高水準である。
- 高温下でも、耐薬品性や耐油性を備えている。
- やはり、強酸、強アルカリ、水蒸気(沸騰水)には弱い
- 繰り返し構造単位の中の、π電子が共役結合をとることが出来る状態であるため、紫外線やガンマ線をそのまま吸収する特性を持つ。
- 100万グレイ(100万 J/kg)の放射線を照射されても、引っ張り強度に変化がない程、放射線に対して強い
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全芳香族ポリエステル(ポリアリレート)
- ポリアリレートも、二価のフェノールと芳香族ジカルボン酸との重縮合反応性で得られる芳香族環から作られるポリエステルである。
- 二価のフェノールとして、ビスフェノールA、芳香族ジカルボン酸として、テレフタル酸及びイソフタル酸を使用して重縮合反応で得られたポリアリレートが、ユニチカのUポリマーである。
- このポリアリレートは、テレフタル酸を使用した場合で315℃、イソフタル酸を使用した場合で、235℃と融点が高いことが特徴の一つである。
- しかし、この2種類の高分子は、結晶性が強すぎるため、非常に脆い性質を持っており、成形材料としては利用は難しい。
- そこで、テレフタル酸とイソフタル酸とを混合したものを使用してビスフェノールAと重合反応させると、非晶性の光学的に透明度の高い強靭な高分子材料が得られる。
- イソフタル酸とテレフタル酸の比率は、70:30 ~ 50:50の割合で混合するのが良い。
- この材料は、射出成形、押出成形、ブロー成形など、一般的に使用されている熱溶融成形法を容易に適用する事ができるため、汎用的な利用が可能である。
- ガラス転移温度が、188℃~194℃と非常に高く、高温条件下で使用しても、線膨張係数や寸法安定性が大変優れた材料である。
- 熱変形温度が175℃となっているが、マイナス60℃~175℃までの広範囲に渡って、十分な光学的透明度を保ちながら、優れた機械的特性を保ち続ける事が出来る。
- 0.1mmの厚みのフィルムで、350nm以下の波長を完全に遮蔽できるため、ポリアリレートの容器であれば、内容物を紫外線によっての変質・劣化が防ぐ事が可能となる。
- 60万グレイ(60万 J/kg)の放射線を照射された場合、引っ張り強度がポリカーボネートで初期値の75%、ポリスルホンで87%の強度低下を示すことに対し、ポリアリレートは、強度の低下はせずに、100%状態を維持する事ができる、耐放射性材料に強い材料である。
- 溶剤接着が可能であるため、二次加工がし易い。
- 超音波接着やバイブレーション接着も有効的に使用が可能であり、良好な接着状態となる。
- やはり、強酸、強アルカリ、水蒸気(沸騰水)には弱い
- 他に、塩化メチレン、トリクロルエチレン、メタクレゾール、クロロホルム、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランに溶解する。
- ベンゼン、トルエン、酢酸エチルでは膨潤する。
[tab:合成法・化学式]
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直接エステル化
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エステル交換反応
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ポリエチレンテレフタレート(PET)
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ポリブチレンテレフタレート(PBT)
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ポリエチレンイソフタレート
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カローザスが合成したポリエステルの構造
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ナイロン66とポリエステル66の構造比較
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ポリオキシ安息香酸 E101
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芳香族ポリエステル E1000、E2000
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ポリアリレート
[tab:利用用途]
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PET、PBT
- 写真・映画フィルム
- 磁器テープ及び磁器膜
- ペットボトル
- 電気部品のコネクター部
- スイッチ類
- コイルボビン
- 自動車電装部品
- ハンドル部品
- 工業用のギアやカム、ノズル部品
- カメラや時計などの部品
- 事務機器部品
- 戸車
- スプレー、ドライヤー部品など
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ガラス繊維との複合材
- モーターボート(複合材料)
- レーシングカーボディー
- 宇宙ロケット船体
- 椅子
- ヘルメット
-
ポリエステルE101, E1000, E2000
- 無給油摺動部品(歯車他)
- 耐熱性機械部品
- プリント基板
- 放射線機器
-
ポリアリレート
- スイッチ
- 中継器のケース
- ギア類
- 時計部品
- カメラ部品
- メガネ
- 義歯
- 香水のボトル
- 目薬等の薬品ボトル
- 自動車部品
- レンズ
- 放射線機器
[tab:END]